エンハンス開発とは?種類や手順、失敗しないための注意点を詳しく解説
企業のITインフラが複雑化する現代において、既存のシステムを最大限に活用し続けることは、競争力を維持するために不可欠です。
しかし、システムの老朽化やビジネス環境の変化により、「既存システムをどう改善していくか」という課題に直面する企業も少なくありません。
その解決策の中心となるのが、「エンハンス開発」です。
目次
エンハンス開発とは?
エンハンス開発とは、既に稼働している既存のシステムに対して、機能の追加、性能の向上、ユーザーインターフェース(UI)の改善など、新たな付加価値を加えるための改修や開発のことを指します。
システムの「寿命」を延ばし、ビジネス環境やユーザーのニーズの変化に対応させ、より長く、より効果的にシステムを活用し続けるための開発です。
単なるシステムの不具合を修正する「保守(メンテナンス)」とは異なり、エンハンス開発は、システムの基本的な構造や目的は変えずに、積極的に新しい価値を生み出すことを目指します。
これにより、企業は常に最新のビジネス要件に適応したIT環境を維持できるのです。
エンハンス開発の4つの種類とは?
エンハンス開発は、システムのどの部分に、どのような目的で手を加えるかによって主に以下の4つの種類に分類されます。
システムの機能追加
ビジネス部門からの要望や、市場の変化に合わせて、システムに新しい機能を持たせる施策です。
例えば、ECサイトであれば「新しいロイヤリティプログラムの機能を追加する」、社内システムであれば「特定の部門の業務効率を上げるための自動化プロセスを組み込む」などが該当します。
これは、直接的に売上向上や業務効率化に貢献するため、投資対効果を最も算出しやすい要素となります。
システムの保守
システムの保守は、主に既存の機能や性能を維持するために行われますが、その中には、法制度や規制の変更に対応するための改修も含まれます。
これらは、システムの動作そのものに新しい価値を加えるわけではありませんが、事業を継続するために不可欠な施策です。
例えば、消費税率の変更に伴う計算ロジックの修正や、近年であればインボイス制度への対応などがこれにあたります。
保守開発を怠ると、企業のコンプライアンスリスクが高まり、事業継続自体が困難になる可能性があるため、非常に重要な要素と言えます。
システムの性能向上
システムを利用するユーザーが増加したり、処理するデータ量が膨大になったりすると、システムの応答速度が遅くなるなど、性能の劣化が顕在化します。
性能向上を目的としたエンハンス開発では、こうしたボトルネックを解消し、システムをストレスなく利用できるように改修します。
具体的には、データベースのインデックス最適化や、処理負荷を分散させるためのアーキテクチャの見直しなどが実施されます。
ユーザーエクスペリエンス(UX)の改善は、顧客満足度や社内業務の生産性に直結します。
プログラムやエディターの改修
この種類は、システムの利用者からは見えない部分の改修、いわゆる「裏側」の改善です。
古いプログラミング言語やフレームワークを新しいバージョンに移行する作業などが該当します。
一見するとユーザーにメリットが無いように見えますが、開発環境を最新の状態に保つことは、セキュリティリスクの低減や、将来の機能追加やバグ修正の効率を大幅に向上させ、結果的に開発コストの抑制につながります。
特に、担当者の退職などでコードがブラックボックス化している場合、この種の改修は、システムを「触りやすく」し、属人化を解消する上で重要な第一歩となるでしょう。
エンハンス開発の手順は?
エンハンス開発は、新しいシステムを一から作る開発とは異なり、既存のシステムという制約の中で改修を進めるため、特有の手順が求められます。
特に「既存機能への影響を最小限に抑える」という点に細心の注意を払う必要があります。
現状分析・要件定義
エンハンス開発の最初にして最も重要なステップは、既存システムの「現状」を正確に把握することです。
エンハンス開発の成否は、この「現状分析」にかかっていると言っても過言ではありません。
既存システムの仕様、特に改修を検討している部分のソースコードや設計書を正確に把握し、何が問題で、何を改善したいのかという「要件」を明確にします。
システムの属人化が進んでいる場合、ドキュメントが存在しないこともあります。
その場合は、ソースコードの解析や、現行担当者へのヒアリングを通じて、システムの「あるべき姿」と「現状」のギャップを洗い出すことが重要です。
影響範囲の調査
エンハンス開発において最も重要な工程の一つが、影響範囲の調査です。
新しい機能や改修が、既存の機能やシステム全体にどのような影響を与えるかを徹底的に洗い出します。
既存システムは複雑に絡み合っていることが多く、小さな変更が予期せぬ場所で大きな不具合を引き起こす可能性があります。
そのため、関連する機能の依存関係を詳細にマッピングし、リスクの高い箇所を特定する必要があります。
ここを怠ると、リリース後に大きなトラブルにつながり、かえって運用コストを増大させる可能性があります。
設計(基本設計・詳細設計)
影響範囲の調査を経て、具体的な改修の方針に基づいた設計を行います。
基本設計では、ユーザーが操作する画面の変更点や、システム間のデータの流れなど、大枠の仕様を決定します。
詳細設計では、プログラムのモジュール単位での実装方法やデータベースのスキーマ変更など、開発者が実際にコーディングを行うための具体的な指示を定義します。
この段階で、ユーザーが操作する画面や挙動などを確認できるプロトタイプを作成できれば、手戻りを最小限に抑えることができます。
開発
設計に基づいて、実際のコーディング作業を行います。
既存の機能に影響を与えないように、特に注意を払って慎重に進めます。
バージョン管理システムを活用し、既存のコードを変更する際は、その理由と内容を明確に記録することが、後の保守性を高める上で非常に重要です。
開発期間中は、設計者と開発者が密に連携を取り、設計の意図が正しくコードに反映されているかを確認します。
テスト
開発が完了したら、改修した機能が要件を満たしているか、そして最も重要な点として、既存の機能に問題が発生していないかを確認するためのテストを実施します。
テスト計画は、改修した部分だけでなく、影響範囲の調査で特定した関連機能や、システムの基幹となる重要な機能を網羅する必要があります。
ユーザーによる受け入れテスト(UAT)もこの段階で実施され、ビジネス部門が求める仕様通りに動作するかを確認します。
リリース
テストで問題がなければ、システムを本番環境にリリースします。
リリース作業は、既存システムの停止時間を最小限に抑えるよう、慎重な計画のもとで行われます。
リリース直後は、新しい機能だけでなく、既存機能も含めてシステム全体を厳重に監視し、万が一の不具合に備える体制を構築しておく必要があります。
運用・保守
システムがリリースされた後も、継続的な監視とメンテナンスを行います。
改修によって新たな問題が発生していないかを注意深く確認し、発生した軽微な問題に対応します。
また、この段階で、今回のエンハンス開発で変更を加えた箇所に関するすべてのドキュメント(設計書、運用手順書など)を更新し、次回の改修や将来の引継ぎに備えることが、属人化を防ぐための極めて重要なプロセスとなります。
エンハンス開発をするときの注意点
エンハンス開発は、既存システムという制約の中で行うため、新規開発にはない特有の難しさが伴います。
以下の注意点を意識することで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。
現状分析をしっかり行う
繰り返しになりますが、既存システムの現状を深く、正確に理解することが、エンハンス開発の成功の鍵を握ります。
特に、ドキュメントが存在しない、あるいは古い場合は、ソースコードそのものが「正」であると捉え、それを読み解く作業に十分な時間を確保する必要があります。
このフェーズを省略したり、軽視したりすると、開発途中で前提が覆り、手戻りや遅延の大きな原因となります。
属人化されたシステムの引継ぎ案件では、この現状分析にコストと時間をかけるべきと言えるでしょう。
ユーザーとコミュニケーションをしっかり取る
エンハンス開発は、ユーザーの「困りごと」や「ニーズ」から生まれることがほとんどです。
そのため、開発側だけで仕様を決定するのではなく、実際にシステムを利用するユーザー部門と密接なコミュニケーションを取り、要件や優先順位に誤りがないかを確認し続ける必要があります。
開発の初期段階でプロトタイプを見てもらう、定期的な進捗報告を行うなど、継続的な対話を通じて、ユーザー部門の期待値と最終成果物の間に乖離が生じないように努めることが重要です。
既存機能への影響もテストする
新しい機能が正しく動作することを確認する「単体テスト」や「結合テスト」はもちろん重要ですが、エンハンス開発では、リグレッションテスト(既存の機能が改修によって壊れていないかどうかを確認すること)が非常に重要になります。
影響範囲の調査に基づき、特にクリティカルな機能や、改修箇所と関連性の高い機能について、入念なテスト計画と実行が必要です。
エンハンス開発に関するよくある質問
エンハンス開発を進めるにあたり、頻繁に寄せられる疑問について解説します。
エンハンス対応とは?
「エンハンス対応」とは、システム開発の現場で、主に「お客様からの要望に基づき、既存システムに機能追加や改善を行うこと」を指す表現です。
これは、システムが稼働し始めた後に発生する、バグ修正(保守)以外の、付加価値を高めるための改修作業全般を意味し、多くの場合、計画的なプロジェクトとして予算と期間を設定して実施されます。
エンハンス業務とは?
「エンハンス業務」とは、システム開発のライフサイクルにおける、システムが稼働した後の「保守・運用フェーズ」の中で、エンハンス開発に関連する一連の活動を総称したものです。
具体的には、ユーザーからの改修要望の受付・管理、その要望の実現可能性の調査、改修計画の立案、実際の開発・テスト、そしてリリース後の効果測定といった、改修サイクル全体を管理・実行する業務が含まれます。
アジャイル開発など他との違いは?
エンハンス開発は、開発手法(どう作るか)を指す言葉ではなく、開発の目的・対象(何を作るか)を指す言葉です。
一方で、「アジャイル開発」や「ウォーターフォール開発」は、ソフトウェア開発における工程の進め方、すなわち開発手法を指します。
したがって、エンハンス開発は、アジャイル開発の手法を用いて行うことも、ウォーターフォール開発の手法を用いて行うことも可能です。
例えば、小さな機能改善を頻繁に行うエンハンス開発には、アジャイル開発の方が非常に親和性が高いと言えます。
エンハンス開発の対義語は?
エンハンス開発が「既存のシステムを改良する開発」であるのに対し、その対義語として挙げられるのは、主に「新規開発(ゼロからのシステム構築)」あるいは、「保守(メンテナンス)開発」です。
新規開発は、全く新しいシステムを一から設計・構築するのに対し、エンハンス開発は既存の基盤の上に手を加えます。
また、保守開発は主にバグ修正や動作環境の維持を目的とする「守りの開発」であるのに対し、エンハンス開発は付加価値創造を目指す「攻めの開発」という違いがあります。
エンハンス開発ならフェアシステムへお任せ
システムの属人化が進んでいる、ドキュメントが不十分な状態からのエンハンス開発は、極めて高い技術力と、既存コードを読み解く粘り強さが求められます。
私たちフェアシステムは、長年にわたり、他社で開発されたシステムの引継ぎと、それに続くエンハンス開発を数多く手がけて参りました。
フェアシステムのエンハンス開発の実績
システム引継ぎを行っているので、そのすべての案件でエンハンス開発を行っている
当社のシステム引継ぎ案件は、そのすべてが、既存システムの状況を正確に把握し、そこからさらに改善を進めるエンハンス開発を伴っています。
すなわち、私たちは、複雑なコードベースや不完全なドキュメントと向き合い、改修を成功させる「エンハンス開発のプロ」であると言っても過言ではありません。
オフショアが書いた複雑なコードを読み解きバージョンアップを行った
特に、ドキュメントが全くない、あるいはオフショア開発などで質問が一切できない状況下でも、私たちは複雑なコードを読み解き、システムのブラックボックス化を解消しながら、大規模なバージョンアップを成功させてきました。
既存のロジックや実装意図を深く理解したうえで、既存機能に影響を与えることなく、必要な箇所のみを正確に対応する技術力は、多くのクライアント様から高く評価されています。
インボイス対応などの一部改修の実績も多数あり
インボイス制度対応のような、法改正に伴う一部改修の実績も多数ございます。
システム引継ぎと同時に、既存のソースコードを理解しながら、他に影響しないように必要な箇所のみに対応するという、高度なエンハンス開発を迅速に実現してまいりました。
このように、貴社のシステムが抱える課題を解決し、エンハンス開発を成功に導くために、ぜひ一度、フェアシステムの専門家にご相談ください。
