システム開発が中止したらどうする?原因や影響、具体的な対策を解説
システム開発の中止は、企業にとって避けたい事態です。
しかし、実際には要件定義の不備やベンダーとのコミュニケーション不足、予算超過などのさまざまな要因によってプロジェクトが途中で中止するケースは少なくありません。
システム開発の最中に、コミュニケーションがうまく取れず、困った経験のある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、システム開発の中止に至る主な原因と企業への影響について解説します。
また、システム開発の中止を回避するための具体的な対策、さらに中止が決定した場合の適切な対応手順について、解説するのでぜひ最後までご覧ください。
また、当社では2025年の11月12日(水)に「システムの引き継ぎに失敗しないための本」を出版します。
長年の経験から体系化したシステム引継ぎのノウハウや、システム開発に失敗した状態からシステムを引継ぐ場合にも役立つ情報が載っているためぜひ参考にしてみてください。
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引き継ぎの専門家に相談する目次
システム開発の中止が企業にもたらす影響
最初に、システム開発の中止が企業にもたらす影響について説明します。
システム開発の中止とは?プロジェクト中断との違い
| 比較項目 | 中止 (完全にやめる) | 中断 (一時的に止める) |
|---|---|---|
| プロジェクトの状態 | 完全に終了し、再開はしない。 | 一時的に停止するが、再開の可能性がある。 |
| 開発した成果物 | 実用化せず、廃棄となることが多い。 | 将来の再開に備えて保管される。 |
| 会計・費用の扱い | これまでにかかった費用は損失として処理する。 | 費用は資産として計上されたままの場合が多い。 |
| 契約関係 | ベンダーとの契約は解除手続きに進む(違約金等の可能性あり)。 | 契約は維持したまま、一時停止の条件を協議する。 |
システム開発の「中止」とは、プロジェクトを完全に終了させ、開発した成果物を実用化しない意思決定のことです。
一方で、プロジェクトの「中断」は、一時的に開発を停止するものの、将来的な再開を想定している状態です。
システム開発の中止の場合、投資した費用や時間が回収できず、企業にとって重大な損失となります。
また、中止と中断では、会計処理や契約解除の手続きが異なります。
さらに、中止の場合は、資産計上していた開発費用の損失処理が必要となり、ベンダーとの契約解除に伴う違約金や損害賠償の問題も発生します。
経営判断として、システム開発の中止と中断を明確に区別することが重要です。
企業が被る金銭的・時間的損害
システム開発の中止によって企業が被る損害は多岐にわたります。
まず、直接的な金銭的損失として、既に支払った開発費用やライセンス料、ハードウェアへの投資などが回収不能となります。
大規模なプロジェクトでは、数億円から数十億円規模の損失が発生することも珍しくありません。
さらに、プロジェクトに投入した人材の時間コストも無駄になります。
社内の情報システム部門やプロジェクトメンバーが費やした数ヵ月から数年の工数は、他の業務に割くことができた時間です。
この時間的な損失は、財務諸表には記載されない隠れたコストとして企業経営を圧迫します。
信頼性の低下とビジネスにおける機会損失
システム開発の中止は、社内外からの信頼を損なうきっかけとなります。
例えば、社内では経営陣や情報システム部門の判断能力が疑問視され、組織の士気低下を招きます。
また、取引先や顧客に対しても、システム導入を前提とした業務改善やサービス向上の約束が履行できなくなり、信用の失墜につながります。
その他には、競合他社がデジタル化を進める中で、自社のシステム開発が上手く進まないということは、市場での競争力低下を意味します。
このように、業務効率化やコスト削減、新サービスの提供といった本来得られるはずだった利益を逃すことになり、中長期的な事業成長の機会を失う結果となるのです。
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引き継ぎの専門家に相談するシステム開発の中止に至る主な原因
次に、システム開発の中止に至る主な原因について解説します。
要件定義が不明確あるいは不十分である
システム開発の中止につながる最も多い原因の一つが、プロジェクト開始時の要件定義の不備です。
「何を実現したいのか」「どのような機能が必要なのか」を曖昧にしたまま開発に着手すると、途中で仕様の変更が頻発し、プロジェクトが混乱します。
特に問題となるのは、業務要件と技術要件の整合性が取れていないケースです。
現場の業務ニーズを十分にヒアリングせず、情報システム部門だけで要件を決めてしまうと、実際の業務フローに合わないシステムになってしまいます。
この結果、開発が進むほど修正コストが膨らみ、最終的に中止せざるを得なくなります。
ベンダーとのコミュニケーションが不足している
発注側とベンダーの間でコミュニケーションが不足していると、認識のギャップが広がり、プロジェクトが破綻します。
例えば、ベンダーが問題を早期に報告せず、納期直前になって「実は間に合わない」と判明するケースも発生しています。
また、発注側が技術的な知識不足から、ベンダーの説明を十分に理解できないまま開発が進むことも危険です。
専門用語が飛び交う打ち合わせで、実は重要な判断を誤っていたという事態が発生します。
双方が同じ言葉を使っていても、イメージしている成果物が全く異なることもあります。
このため、ベンダーと定期的に進捗状況などを確認し、オープンなコミュニケーションを意識することが必要です。
ベンダーとの契約情報に課題がある
ベンダーとの契約書の内容が不明確であることも、開発中止の一因です。
特に「完成の定義」が曖昧だと、完成したか否かで発注側とベンダーの見解が対立し、法的紛争に発展することがあります。
また、請負契約と準委任契約では責任範囲が大きく異なりますが、プロジェクトの性質に合わない契約形態を選択すると、トラブルが発生しやすくなります。
中途解約の条項や損害賠償の範囲についても、事前に明確にしておく必要があります。
予算・スケジュール管理が上手くできていない
予算・スケジュール管理が上手くできていないことは、システム開発の中止につながります。
予算管理に関して、当初の見積もりが甘く、プロジェクトが進むにつれて予算超過が明らかになるケースがあります。
特に大規模なシステム開発では、当初の予算の2倍、3倍に膨れ上がることも珍しくありません。
この場合、経営陣から追加予算の承認が得られず、プロジェクトの継続が不可能になることもあります。
一方で、スケジュール管理の失敗も、プロジェクト中止の要因です。
一つの工程が遅れると後続の工程すべてに影響し、最終的にビジネス上の期限に間に合わなくなります。
経営戦略の変更や市場環境の急変に対応できない
企業の経営戦略が変更されたり、企業の合併・買収や組織の再編が発生したりすると、開発中のシステムの必要性自体が失われることがあります。
特に開発期間が長期に及ぶプロジェクトでは、着手時と完成時で事業環境が大きく変わっているケースが少なくありません。
競合他社が革新的なサービスを投入したり、法規制が大幅に変更されたりすると、開発中のシステムが時代遅れになってしまいます。
また、経営トップの交代によって方針が変わり、前任者が決定したプロジェクトが中止されることもあります。
このように、システム開発は経営戦略と密接に連動しているため、外部環境の変化に柔軟に対応できる体制が求められます。
技術的な課題や人材不足で開発が進まない
技術的な課題や人材不足で開発が進まないこともシステム開発が中心となる原因となります。
例えば、新しい技術やフレームワークを導入する場合、ベンダー側にも十分なノウハウがなく、試行錯誤を繰り返すうちにスケジュールが予定通りに進まなくなります。
また、システムの複雑性が想定を超えていたり、既存システムとの連携に想定外の困難が生じたりすることもあります。
その他にも、ベンダー側の優秀なエンジニアが他のプロジェクトに引き抜かれたり、発注側のキーパーソンが異動したりすると、プロジェクトの継続性が難しくなります。
特に専門性の高い分野では、代替要員の確保が難しく、システム開発の中止につながります。
システム開発中止を回避するための具体的な対策
次にシステム開発の中止を回避するために講じるべき対策を具体的に説明します。
明確な要件定義とスコープマネジメントをする
システム開発中止を回避するためには、明確な要件定義とスコープマネジメントが必要です。
要件定義の精度を高めるには、現場の業務担当者を巻き込んだ徹底的なヒアリングが重要となります。
単に要望を聞くだけでなく、現状の業務フローを分析し、どこに課題があるのか、システム化によって何を実現したいのかを明確にします。
また、要件定義書は単なる機能の一覧ではなく、ビジネス上の目的やシステムへの期待・効果、制約条件なども含めた包括的なドキュメントとして作成しましょう。
一方で、作業範囲を明確に決め管理するスコープマネジメントでは、「やること」と同じくらい「やらないこと」を明確にすることが重要です。
すべての要望に応えようとするのではなく、優先順位をつけ、MVP(Minimum Viable Product)の考え方で、まず最小限の機能で稼働させることを目指します。
ベンダーにこまめに進捗を確認するなどのコミュニケーションをとる
効果的なコミュニケーションには、定期的な進捗会議だけでなく、日常的な対話の機会を設けることが重要です。
そのためには、週次や隔週の定例会議に加え、チャットツールやプロジェクト管理システムを活用して、リアルタイムで情報共有できる環境を整備します。
進捗確認では、単に「予定通りです」という報告を受けるのではなく、具体的な成果物をレビューし、課題やリスクについて議論します。
また、発注側も技術的な基礎知識を習得し、ベンダーとの対話の質を高める努力が必要です。
専門用語の意味を理解し、技術的な選択肢について議論できるレベルを目指します。
なお、必要に応じて外部の専門家をアドバイザーとして加えることも有効です。
ベンダー選定や契約内容に注意する
ベンダー選定では、価格だけでなく、類似プロジェクトの実績や技術力、プロジェクト管理能力を総合的に評価します。
特に自社の業界や業務に関する知見を持っているかどうかが重要で、口コミなどを活用してその業界での評価を確認します。
また、契約書には、「何をもって完成とするか」という検収基準を具体的に記載することが重要です。
機能要件だけでなく、性能要件(処理速度、同時接続数など)や品質要件(不具合の許容範囲など)も明確に記載します。
曖昧な表現は後のトラブルの元となるため、注意しましょう。
また、変更管理のプロセス、追加費用の算定方法、中途解約時の取り扱いなども契約書に明記します。
特に準委任契約の場合は、成果物の所有権や瑕疵担保責任について明確にしておく必要です。
プロジェクト管理体制の強化とリスクヘッジを行う
プロジェクト管理では、経験豊富なプロジェクトマネージャー(PM)を配置することが重要です。
PMには技術的な知識だけでなく、ステークホルダー間の調整能力やリスク管理能力が求められます。
必要に応じて、外部の経験豊富なPMを招聘することも検討しましょう。
また、リスク管理では、プロジェクト開始時にリスクアセスメントを実施し、想定されるリスクとその対応策を洗い出します。
技術的リスク、人的リスク、外部環境リスクなど、さまざまなリスクを想定し、定期的に見直しましょう。
マイルストーンを細かく設定し、早期に問題を察知できる仕組みを構築することが重要です。
アジャイル開発手法の導入により柔軟な対応を行う
システム開発の中止を避けるにはアジャイル開発により、変化が起こることを前提に外的要因にも柔軟に対応できるよう備えることが必要です。
短い開発サイクル(スプリント)で機能を実装し、動作するソフトウェアを早期に確認できるため、要件のズレを早期に発見して修正することができます。
ウォーターフォール型の開発では、すべての要件を最初に確定させる必要がありますが、アジャイルでは優先度の高い機能から順次開発し、ビジネス環境の変化に応じて要件を調整できます。
この柔軟性が、プロジェクトの中止リスクを低減します。
ただし、アジャイル開発を成功させるには、発注側の積極的な関与が必要です。
プロダクトオーナーとして定例会議に参加し、フィードバックを提供する体制を整えることが重要です。
外部の専門家による第三者レビューを活用する
プロジェクトの客観的な評価を得るために、外部の専門家による第三者レビューを活用することも効果的です。
これにより、社内のメンバーだけでは気づかない問題点やリスクを、第三者の視点から指摘してもらえます。
第三者レビューは、プロジェクトの重要な局面(要件定義の完了時、設計完了時、テスト開始前など)で実施します。
特に大規模プロジェクトや初めて取り組む技術領域のプロジェクトでは、問題の発見が遅れるほど修正コストが増大するため早期のレビューが重要です。
レビュー担当者には、同業界のシステム開発経験者やITコンサルタント、場合によっては大学の研究者など、専門性の高い人材を選定します。
単なる形式的なレビューではなく、具体的な改善提案を得られるよう、十分な情報提供と対話の機会を設けることが大切です。
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引き継ぎの専門家に相談するシステム開発中止が決定した場合の適切な対応
次に、システム開発の中止が決定した場合の適切な対応方法について解説します。
投下したコストの会計・税務上の処理に注意する
システム開発の中止が決定した際は投下したコストの会計、税務上の処理に注意することが重要です。
資産計上していた開発費用は、中止が決定した時点で全額損失の処理をする必要があり、経理部門と連携し、専門家の助言を得ながら進める必要があります。
一方で、税務上も適切な処理が求められます。
システム開発に投下したコストを損失として計上するためには、中止の意思決定を示す取締役会議事録などの証拠書類が必要です。
また、中止に至った合理的な理由を説明できるよう、経緯を文書化しておきましょう。
監査対応も含めて、経理部門や税理士と密接に連携して進めることが必要となります。
ベンダーとの契約解除と損害賠償請求に適切に対応する
ベンダーとの契約解除と損害賠償請求に適切に対応するようにしましょう。
契約解除の手続きは、契約書の規定に従って進めます。
中途解約の条項が明記されている場合はそれに従い、記載がない場合は民法の規定にもとづいて対応します。
一方的な解除は違約金や損害賠償のリスクがあるため、可能な限りベンダーと協議して合意解除を目指しましょう。
また、開発中止の原因がベンダー側の債務不履行にある場合、損害賠償の請求を検討します。
ただし、訴訟には時間とコストがかかるため、現実的な費用回収の可能性を考慮して判断する必要があります。
弁護士に相談し、法的な根拠と立証の可能性を確認しましょう。
開発資産の引継ぎと情報管理を行う
開発資産の引継ぎと情報管理を行いましょう。
開発中止が決定しても、それまでに作成されたドキュメントやソースコード、データベースなどの開発資産は貴重な企業の資産です。
契約書の規定にもとづいて、これらの成果物をベンダーから引継ぎ、プロジェクトを再開する可能性もあるため成果物は確実に保管します。
特にソースコードについては、著作権の帰属を明確にし、必要な範囲でライセンスを取得しましょう。
一方で、情報セキュリティの観点からも、適切な管理が必要です。
開発過程で取り扱った個人情報や機密情報について、ベンダー側で確実に消去されたことを確認しましょう。
その他にも、アクセス権限の削除やアカウントの無効化など、セキュリティリスクを最小化する措置を講じることが重要です。
関係者への説明や社内外との調整を行う
システム開発の中止は、多くの利害関係者に影響を与えるため、丁寧な説明と調整が重要です。
まず社内では、経営陣への報告を行い、中止に至った経緯と今後の対応方針を説明します。
現場の業務部門に対しても、システムの導入を前提に準備していた業務改革が実現できなくなることを説明し、代替策を検討します。
社員のモチベーション低下を防ぐためにも、今後の方針を明確に示すことが重要です。
一方で、社外に対しても、必要に応じて説明を行います。
特に取引先やパートナー企業に影響がある場合は、詳細に状況を説明し、信頼関係の維持に努めることが重要です。
また、上場企業の場合は、投資家への開示義務も考慮する必要があり、対応を迅速に行うことが重要です。
システム開発中止の事例から学ぶ教訓
大規模なシステム開発の中止事例は、業界を問わず発生しています。
ある企業では、要件定義が固まらないまま、システム構築サービスの正式な契約なしに開発を進めたことで結果的にシステム開発の中止に至りました。
システム開発が進むにつれ発注側の要望が膨らみ、当初の想定を大幅に超える費用が見積もられたためです。
ここから学ぶべき教訓としては、どんなにスケジュールが厳しくとも、開発の範囲、費用、納期を文書で明確に合意し、正式な契約を締結してから作業に着手することが重要であるという点です。
口頭での合意や安易な見切り発車は、深刻な金銭的損失と訴訟リスクに直結します。
参考:経済産業省 情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(P.22)
まとめ
システム開発の中止は企業に重大な損失をもたらしますが、適切な対策により回避することが可能です。
そのため、システム開発を成功させるには、明確な要件定義、綿密なコミュニケーション、適切なプロジェクト管理体制の構築が重要です。
万が一中止が決定した場合も、会計処理や契約の解除、情報管理など、適切な手順を踏むことで損失を最小限に抑えることができます。
また、開発中止でシステムが未完成の場合でも、経験豊富なベンダーやコンサルタントに相談することで、プロジェクトの立て直しや資産の有効活用が可能です。
重要なことは、システム開発に失敗した経験から学び、次のプロジェクトに活かすことです。
当社、フェアシステムでは開発途中のアプリやシステムの解析を得意としています。
そのため、弊社ではシステム引継ぎサービスである「システムトラブル110番」を提供しています。
他社が開発したアプリやシステムが未完成の場合でも専門チームで解析し、迅速に引継ぎ、そして、システムを完成させることが可能です。
事情によりシステム開発を中止してしまったが、何としてでもシステム開発を再開したいという方はぜひ以下からお気軽にご相談ください。
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